インドから日本へ、新たな挑戦の舞台へ
リンシーさんはインド南部のケララ州出身の25歳。母国では病院で看護師として働いていました。SOMPOケアのインド介護人材受入れプログラムの第一期生として、来日したばかりで、そんぽの家 隅田公園に配属。なぜ、日本での介護の道を選んだのでしょうか。
「日本は安全できれいな国です。仕事のチャンスがたくさんあると感じました」と、リンシーさんはその理由を語ります。母国インドでは、看護師の仕事の機会は限られており、給与水準も日本より低いのが現状だと言います。その中で、日本の安定した仕事と生活に魅力を感じ、介護の専門職を目指すことを決意しました。

日本での介護現場で感じる喜びと成長
来日してまだわずかですが、リンシーさんは現場での喜びを見出しています。
「一緒に働くスタッフはとても優しくて、仕事を手伝ってくれます。とても楽しいです」と、職場の温かい雰囲気に感謝の気持ちを述べます。利用者からも「本当に優しいね」と声をかけられることもあり、そのたびにやりがいを感じるそうです。 一方で、異文化の地での挑戦もあります。最も苦労するのはやはり言葉の壁。「日本語がまだ上手ではないので、利用者とのコミュニケーションが難しいと感じています。特にお風呂やトイレの介助は、細かいコミュニケーションが必要なので、勉強が必要だと感じています」と、正直な気持ちを打ち明けてくれました。しかし、持ち前の真面目さと熱心さで、日々スキルアップに励んでいます。

インド人材の可能性に着目

SOMPOケアがインドからの介護人材の受け入れに力を入れる背景には、日本の介護業界が抱える深刻な人材不足があります。迫田満 海外事業室長は、この取組みについて「未来の介護」を見据えた戦略的な一歩だと語ります。
インドをパートナーに選んだ理由について、「インド人は非常に真面目で学習意欲が高い。特に、高学歴の看護師などの高い専門性と意欲を日本でも活かしてほしいと考えました。」
勤勉で語学などの学習意欲が高い点や、家族との結びつきが非常に強く、一度決めたことに対して強い責任感を持つ国民性も、日本の介護現場で長く活躍するための素養として期待されています。
このプログラムでは、インド現地での研修に力を入れています。インド国家技能開発公社(NSDC)の完全子会社NSDC Internationalと共に、約1年かけて日本語と日本式の介護に関する教育を行います。SOMPOケアユニバーシティを模した「ナーシングケアラボ」をインドに開設し、来日前に実践的なスキルを習得できる環境を整備しています。


「日本に来てもらう前に、日本の文化や介護技術をしっかりと学び、ギャップを埋めることが重要だと考えています。来日後もOJTはもちろん、住まいなどの生活面や日本語学習、キャリアパスのサポートも継続的に行っています」と、手厚い支援体制を強調します。
介護福祉士、そしてその先へ:キャリアパスを共に描く
高い意欲を持つ人材を、SOMPOケアはどのように育成していくのでしょうか。
「最終的には介護福祉士の国家資格取得を目指してほしい」と考えています。特例措置があるとはいえ、介護福祉士の資格取得には日本語の壁を乗り越える必要があるため、会社として全面的に支援する方針です。さらに、介護の現場だけでなく、将来は管理職を目指すことも可能であり、長期的なキャリアを築いてほしいと期待しています。
SOMPOケアがインドから受け入れた第1期生は6名。そのうち2名がそんぽの家 隅田公園に配属され、他のメンバーは都内の他の施設で活躍しています。今後も第2期、第3期と人材の受入れを継続し、将来的には年間40~60名規模での採用を目指し、各地域の人材不足解消に貢献していきます。
リンシーさんは将来について、「日本で10年以上働き、介護福祉士の資格を取りたいです。いつかマネージャーになれたら嬉しい」と、目を輝かせながら語りました。
リンシーさんと同じく、そんぽの家 隅田公園に配属されたアンジャニさんは、「介助する際の利用者への声掛けや、最小限の力で介助するための技術(ボディメカニクス)を学べて良かったです。私も介護福祉士の資格を取って、家族を日本に呼び寄せたいです」と語りました。
SOMPOケアの取組みは、日本の介護人材不足解消に貢献するだけでなく、インドの若者たちに新たなキャリアの機会を提供し、多様な人材が輝ける社会の実現を目指すものです。日印両国が手を取り合い、未来の介護の形を築いていく。リンシーさん、アンジャニさん 2人の笑顔は、その希望に満ちた道のりを象徴しています。
