現場から始まった環境人材育成の芽
遡ること25年前の2000年。
環境問題への関心を抱き、大学では生態系と資源の保全・管理・活用などさまざまな問題を解決する社会の在り方を考える「地域生態システム学科」で学んでいた私は、SOMPO環境財団による大学での説明会をきっかけに、CSOラーニング制度と出会いました。受け入れ先となったのは、「認定特定非営利活動法人FoE Japan」が取り組む、極東ロシアに広がる世界最大級の針葉樹林「シベリアタイガ」を守る保全プロジェクト。かつて一人で旅したサハリンの記憶とも重なり、1期生としてNPOの現場へと踏み出します。

当時の私は、環境問題はどこか「自分の周囲の社会や日々の生活とは切り離された、世界的な枠組みの中で語られる出来事」のように感じていました。しかし、現地で目の当たりにしたのは、環境保全に尽力するNPO職員、スタディツアーを取材するライター、映像クリエイターなど、多様な人たちがそれぞれの立場から真剣に環境問題に向き合う姿でした。「環境問題に向き合う仕事は一つではない。学びを社会に生かす方法は無数にある」、その事実を現場での協働を通じて実感していきました。
あれから25年。
私は、あの現場で得た「学びを社会に生かす」という姿勢を軸に様々なキャリアを積み重ね、現在はSOMPOリスクマネジメント社で、環境・ESG分野のコンサルタントとして企業支援に携わっています。
SOMPO環境財団が掲げる「木を植える人を育てる」という理念のもと、私を含む21人から始まった小さな取組みは全国へと広がり、1,300人以上の修了生を輩出する制度へと成長を遂げています。
社会の変化とともに進化してきたCSOラーニング制度
私がこの制度に参加した2000年代初頭は、地球温暖化の問題がようやく社会一般に知られ始めた頃でした。CSOラーニング制度は、環境問題を「自分ごと」として捉え、現場で行動しながら学ぶ新しい人材育成プログラムとして誕生。参加した学生は、明確な答えのない課題に向き合いながら、環境を支える人としての第一歩を踏み出していきました。
2005年の愛知万博を契機に、持続可能な社会という概念が広く浸透すると、制度の活動テーマも次第に多様化していきました。環境問題は単なる自然保護にとどまらず、人と社会のあり方そのものとして語られるようになっていきます。
そして2011年の東日本大震災は、社会の価値観を問い直す大きな転換点となりました。以降は「人の暮らしを支える環境」をテーマの中心に据え、地域再生や防災教育など、より身近な現場へと活動の幅を広げていきました。社会課題を「自分の暮らしの延長線」として捉える視点は、制度の新たな方向性を形づくりました。
さらに2020年代。コロナ禍を経て、社会はオンラインやデジタルを前提とした新しい時代へと突入しました。若い世代の関心も、地球温暖化や気候変動だけでなく、生物多様性や自然共生社会といった、より幅広いテーマへと変わりつつあります。

このような社会の変化に対応し、CSOラーニング制度は、地域の枠を越えたオンラインでの学びやインドネシアでの海外展開など、今もなお新たな挑戦を続けています。
時代が移り変わっても、「木を植える人を育てる」というSOMPO環境財団の理念は揺らぐことはありません。25年の時を経て、CSOラーニング制度は、その意義をさらに深め、進化し続けています。
再び、学び合う場を
2000年にスタートしたCSOラーニング制度は、これまで数多くの修了生を社会へと送り出してきました。一方で、2010年代初頭くらいまでは、現在のSNSのように誰もが日常的に気軽につながれる環境は整っておらず、 修了生同士のつながりが時間とともに希薄になりやすいという課題がありました。
こうした課題を解決するために、25周年という節目にSOMPO環境財団が「修了生コミュニティ」を立ち上げました。ここでは、社会の第一線で活躍する修了生が再び集い、共創プロジェクトの立ち上げ、現役インターン生に向けたキャリア相談、さらにはSOMPOグループとの連携による社会課題解決への挑戦など、多層的な交流が生まれることが期待されています。
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「学びを終わりではなく、続きにする」
この考え方こそが、修了生同士のつながりを深め、協働や共創を生み出すコミュニティの核になると、確信しています。25周年という節目で生まれたこの動きは、CSOラーニング制度がこれから踏み出す、次のフェーズを象徴する大きな一歩だと感じています。

25周年記念イベントでは、修了生から期待を寄せる声も聞かれました。
同世代の横のつながりはあっても、世代を超えた縦のつながりは希薄でした。修了生には本来、多くの先輩や後輩がいるはずなのに、実際に話せているのはごく一部。その状況にもどかしさを感じていました。社会や環境をより良くしていきたいという熱い想いを、社会人になった今も持ち続けている人たちに巡り会える場は、決して多くありません。これこそが、この制度の真の価値だと感じています。
積水ハウス株式会社 環境推進部
松田弘一朗
つなぎ、つながり、未来をつくる
CSOラーニング制度の真の価値は、単なる環境教育にとどまらず、「自ら行動を起こせる人を育てる仕組み」だと確信しています。これからの社会は、気候変動、防災、福祉、地域連携など、多様な課題が複雑に絡み合い、ますますその解決が難しくなっていきます。そうした時代だからこそ、分野や専門性の壁を越えて、利他の意識をもち柔軟に行動できる人材が不可欠です。
SOMPO環境財団では、一人ひとりが具体的な行動を起こすだけではなく、そのマインドを社会全体に広げていく人を育むことこそが、社会課題解決への最も大きな貢献であると信じ、この制度を運営してきました。世代や立場を超えたつながりは、未来の環境と社会を形作る大きな原動力となり、新たなイノベーションを生み出していきます。
私が制度の一期生として植えた一本の小さな木に、歴代の制度参加者一人ひとりが植えてきた木々が加わり育まれ、豊かな森へと成長しようとしています。そして、その森の中から、これからの社会を創りあげていく新しい芽が次々と育ち始めています。
壁画制作:OVER ALLs



