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変わりゆくエネルギー市場のリスク管理

電力需要の急増や地政学的変化、新技術の台頭により、エネルギー業界は急速に変化しています。今回は、業界の動向やそのリスクと、当社チームが注視する課題を掘り下げます。

Index

エネルギー市場の現状

地政学的な緊張の高まり、貿易の混乱、そして各国政府の政策の転換など、現在のエネルギー市場は、絶えず変化しています。これらはすべて、エネルギーの安全保障や適正価格の維持、安定供給に影響を及ぼしています。特に近年、AIのデータ処理を担うデータセンターの増加から再生可能エネルギーの拡大まで、そのリスクは急速に変化しています。

近年の世界情勢を背景に、再生可能エネルギーへの関心がさらに高まっています。

当社のお客さまの状況を見ると、従来型エネルギーの上流(石油・ガスの探鉱)および下流(精製・石油化学処理処理)部門での成長は限定的です。一方で、中流部門では、特に近年のエネルギー危機を受けて建設された液化天然ガス(LNG)プラントを中心に、事業機会が拡大しています。

同時に、米国をはじめ各国・地域のデータセンターによる膨大な電力需要の高まりにより、再生可能エネルギーと火力発電など従来型燃料双方の発電所の新設が進んでいます。こうした動きは新たな機会を生み出す一方で、保険会社とお客さまの双方にとって、リスクをより複雑にする要因にもなっています。

再生可能エネルギーとデータセンターの需要の高まり


当社のイギリスにおける再生可能エネルギー分野の保険事業を統括する立場からしても、太陽光発電、風力発電、そして蓄電池分野への投資が過去最高を記録する中、再生可能エネルギーがエネルギートランジションの主役であり続けていることを日々実感しています。従来の化石燃料(石油・ガス)への投資は減少傾向にあるものの、エネルギートランジションに向けた総投資額は歴史的な高水準に達しています。

ポッドキャスト「Redefining Risk with Sompo」

世界の保険市場の「いま」と「これから」を、Sompoのエキスパートが多角的に読み解きます。番組では、実践的なヒントや深い対話を通じて、未来をより前向きに見つめるためのインサイトをお届けします。

詳しくは、ポッドキャスト「Redefining Risk with Sompo」(英語)でお聴きください。

その大きな要因の一つが、データセンターの電力需要を急増させているAI革命です。これにより、引き続き重要な役割を果たす陸上風力発電に加え、特に太陽光発電やバッテリーエネルギー貯蔵システムの成長が加速しています。既存のデータセンターの多くは、竜巻の多い米国中西部など、自然災害の影響を受けやすい地域に立地しており、今後もそうした地域に建設される可能性があります。データセンターと、それを支える再生可能エネルギー設備はいずれも災害に対して脆弱であり、保険市場がその関連リスクに慎重になるのは当然といえます。

AIが、電力を大量に消費するデータセンターの需要を押し上げています。

モデリングの課題と自然災害リスク

ポッドキャストで指摘した最大の課題の一つは、こうしたリスクをどのように適切に評価し、モデル化するかということです。これまでに確立されてきた多くのリスクモデルは、ハリケーンや地震といった従来型の災害や頑丈な構造物を想定して設計されていました。しかし、太陽光発電所や風力タービンなどの再生可能エネルギー施設は、特定の条件下に設置されることが多く、激しい雷雨や山火事、洪水などの二次災害を含む、局地的な異常気象の影響をより受けやすくなります。

再生可能エネルギー技術は比較的新しく、まだ十分に検証されていないこと、実績データが限られていること、さらに設備が高リスク地域に集中する場合があることから、従来型のモデルでは、こうした損失額を過小評価してしまう可能性があります。特に、こうしたリスクの集中によって生じる「集積リスク」は、保険業界にとって大きな課題となっています。

集積リスクとは?

保険業界における集積リスクとは、地理的な集中や共通インフラ(送電システム等)への依存など、特定の要因に対して複数の類似資産や保険契約が同時にさらされることによって生じるリスクを指します。大規模な暴風雨などの単一の災害がそのエリアを襲った場合、連鎖的に損失が発生し、想定以上に大きな損失につながる可能性があります。再生可能エネルギー分野では、送電網に接続しやすい場所に太陽光発電所やバッテリーエネルギー貯蔵設備が近接して建設されることが多いため、この問題がより顕在化しています。

たとえば保険業界では、洋上風力発電をより適切にモデル化する手法の開発が進められています。特に、海底ケーブルの敷設や修繕にかかるコストは、継続的に発生し、かつ高額化しています。陸上発電の分野では、太陽光パネルのガラスを厚くしたり、雹を伴う嵐の際にパネルを安全な角度に傾ける「退避角度」の自動調整機能などの技術革新により、損害の軽減が進んでいます。その一方で、テクノロジーの進化が速く、リスク予測モデルの追随が難しくなっています。

高い専門性とリスク管理で価値を届ける

多くの課題があるものの、再生可能エネルギー市場には大きな成長機会があります。競争のある市場環境の中で、保険の引受キャパシティも十分にあるため、現在は買い手(保険契約者)にとって有利な時期といえるでしょう。従来型エネルギー分野を担当してきたアンダーライターも、資金調達要件や保険契約の仕組み、事業運営者の能力やOEM(委託製造)への理解など、多くの共通点があることから、再生可能エネルギー分野へ参入するケースが増えています。特に洋上風力発電の分野では、歴史の長い石油・ガス産業の請負業者やサプライチェーンが培ってきた技術や経験を有効に活用できます。海上保証のためのリスク検証など、もともと上流部門で磨かれてきた専門技術は、現在、洋上風力発電施設の建設や設置において非常に重要な役割を果たしています。

Sompoでは、上流、下流、従来型電力、再生可能エネルギーの各分野の専門家が、1つのチームとして密接に連携することで、当社ならではの強みを発揮しています。これにより、複数の保険契約についてパッケージ化された包括的なソリューションを、単一の窓口から提供することが可能になります。

「石油・ガス分野への投資は減少する一方、エネルギー業界の総合的支出は高水準を維持しています」
詳しくは、ポッドキャストでお聴きください。

さらに、当社では保険提供にとどまらず、リスク管理にも注力しています。当社のリスクエンジニアは、世界各地で資産評価を行い、各地のベストプラクティスを取り入れながら、新技術のリスク管理に取り組むお客さまを支援しています。お客さまや保険ブローカーとの協議に早い段階から関与することで、単に保険の引受キャパシティを提供するだけでなく、お客さまがより安全かつ効率的に事業を運営できるよう、真の価値を提供しています。たとえば、アジアやヨーロッパで施設評価を行ったエンジニアは、そこで得た実証済みのアプローチを米国や英国の事業者にも共有し、他では得られないインサイトをお客さまに提供できます。こうしたグローバルな視点は、お客さまが新たなリスクを予測・管理し、最終的に損失を減らすことに役立ちます。これは、単なる保険金支払いという枠組みを大きく超える真の価値提供といえます。

このように、強固な損害対応力に支えられた専門家連携型のアプローチがあるからこそ、SOMPOグループは保険プログラムの組成を主導し、エネルギー移行を責任ある形で支援することができるのです。

このトピックに関心のある方は、ぜひポッドキャストの本編をお聴きください。

Sompoのエキスパートが、ポッドキャスト「Redefining Risk with Sompo」で、保険市場を動かすトレンドや課題をわかりやすく解説します。最新の業界インサイトに触れたい方は、ぜひチェックしてみてください。
ポッドキャスト(英語)

Warren Diogo

Warren Diogo

ロンドン保険市場と再生可能エネルギー分野で約20年の経験と豊富な知見を持ち、同分野で事業を展開する世界中のお客さまに最適な商品・サービスを提供している。

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